静岡メンズ外来、担当医師の大石龍之介です。
今回はテストステロン補充の効果と、EDは治るのか、についてです。
結論から申し上げると、テストステロン補充療法(TRT)は、「テストステロンが低い男性(男性性腺機能低下症・LOH症候群)」では、多くの症状を改善することが質の高いエビデンスで示されています。
一方で、正常なテストステロン値の男性に、さらにテストステロンを補充しても劇的な効果は期待できません。
これは近年のメタアナリシスや国際ガイドラインでほぼ一致した見解です。
An updated systematic review and meta-analysis of the effects of testosterone replacement therapy on erectile function and prostate:Front Endocrinol (Lausanne). 2024 Jan 26:15:1335146. doi: 10.3389/fendo.2024.1335146. eCollection 2024.
テストステロン補充療法で、EDは治るのか?
答えは「原因による」です。
テストステロン不足が原因であれば、改善します。
例えば
- LOH症候群
- 原発性性腺機能低下症
- 下垂体疾患
では、TRTによってEDが改善します。
2024年のメタアナリシス(28件のRCT、3,461例)では、IIEF(International Index of Erectile Function)が有意に改善しました。
しかしながら、EDの原因の約70~80%は
- 動脈硬化
- 糖尿病
- 高血圧
- 神経障害
です。このタイプではTRTだけでは十分改善しません。
つまり
- テストステロンは「勃起スイッチ」を入れやすくするが、血流そのものを改善する薬ではない
というわけですね。
テストステロン補充で、ED改善を目指す前にすべき事
非常に重要なのがここです。
低テストステロンでは
- バイアグラ(シルデナフィル)
- レビトラ(バルデナフィル)
- シアリス(タダラフィル)
などが効きにくいことがあります。
TRTを追加すると、PDE5阻害薬への反応性が改善することが報告されています。
そのため、現在のガイドラインでも
- 低テストステロン+ED
ではTRTを検討することが推奨されています。
まず一般的なED治療を行い、それで改善がなければ、血中テストステロン濃度やPSAを測定し、必要に応じてテストステロン補充療法を行なっていく、というわけですね。
A critical analysis of the role of testosterone in erectile function: from pathophysiology to treatment-a systematic review:Eur Urol. 2014 Jan;65(1):99-112. doi: 10.1016/j.eururo.2013.08.048. Epub 2013 Aug 29.
ED改善以外の、テストステロン補充の効果
| メリット | エビデンス | コメント |
|---|---|---|
| ❤️ 性欲改善 | ★★★★★ | 最も改善しやすい症状 |
| 🍆 ED改善 | ★★★★☆ | テストステロン欠乏が原因なら改善 |
| 🌅 朝立ち改善 | ★★★★★ | 比較的早期に改善 |
| 💪 筋肉量増加 | ★★★★★ | 除脂肪体重増加 |
| 🏃 筋力向上 | ★★★★☆ | トレーニングとの併用で効果増強 |
| 🔥 内臓脂肪減少 | ★★★★☆ | ウエスト減少が期待される |
| 🦴 骨密度増加 | ★★★★☆ | 長期投与で骨粗鬆症予防 |
| 😊 活力・疲労感改善 | ★★★★☆ | QOL改善に寄与 |
| 😌 気分改善 | ★★★☆☆ | 軽度抑うつ・無気力改善 |
| ❤️ PDE5阻害薬の効果改善 | ★★★★☆ | ED治療薬が効きやすくなる |
Testosterone therapy in hypogonadal men: a systematic review and network meta-analysis:BMJ Open
. 2017 Nov 16;7(11):e015284. doi: 10.1136/bmjopen-2016-015284.
筋肉量・筋力の増加
これはかなりエビデンスがあります。TRTにより
- 除脂肪体重↑
- 筋力↑
- 筋肉量↑
が改善します。
特に高齢男性では、サルコペニア予防にも期待されています。
内臓脂肪減少
テストステロンは
- 脂肪細胞分化を抑制
- 筋肉を増やす
ため、結果として
- 内臓脂肪↓
- ウエスト↓
が報告されています。
骨密度上昇
骨芽細胞を刺激するため、長期では
- 骨密度↑
- 骨粗鬆症予防
が期待できます。
特に、2年以上で効果が大きくなります。
気分・抑うつ改善
低テストステロン男性では
- 抑うつ
- 無気力
- イライラ
- 活力低下
が改善します。ただし、重症うつ病の治療薬ではありません。
疲労感・活力
患者さんが最も実感することが多い症状です。
よくある感想は
- 朝起きやすくなった
- 仕事への意欲が戻った
- 運動したくなる
などです。
認知機能
期待されていましたが、現在のところ明確な改善効果は証明されていません。